アトミック・ブロンドについて個人的に思うところ

アトミック・ブロンドのことについて語りたいけど、ネタバレも微妙だし、文字数すごいことになるので勢いでブログにしてみた。

 

ジョン・ウィックでデヴィット監督を知ってからあの映像のテイストがものすごくツボで、アトミック・ブロンドが現地で公開してからずっと日本こないかな〜こないかな〜来てくれ〜って思ったら来てくれたので、それはそれは嬉しかったんですよね。

 

話的にはちょっと難しいところがあります。

人間関係もそうですが、テーマがスパイですし各国のスパイが入り乱れる混沌としたドイツベルリンなもので、まあこれが面白い!

 

以下ネタバレ満載

 

 

 

音楽

劇場で見た人が口を揃えて発言していたのが「音楽がいい」でした。80年代の音楽がメインに使われていて、演出にも巧妙に使用されています。

最近の流行りが80年代の曲を使うというところもあるのですが、ここまで使ったならもう潔いですよ。

予告から音楽ガンガンなりまくりなんですよね。

本当にいい。

また映画とセロン姉さんの雰囲気にマッチしてるんだわ〜…。

たまんねえな。

サントラは買いでしたが、重要な曲が入ってないのでそれは別にDLしよ!って感じです。

 演出として、ストーリー性で(言い方悪いですが、)端折る時に音楽に乗せてダイジェスト。

場面転換、アクションの音ハメなんてを効果的に使用しています。

でもびっくりすることに、一番の見所のロングカットのアクションシーンは無音なんです。それがこのあと書く生々しいアクションにつながります。

 

生々しいアクション

劇場に見に行った人がこれもまた口を揃えたのが「アクションがリアル」っていうところです。ここは私もすごく感じました。

効果音もそうですが、攻撃をする、受けるの描写がとにかく丁寧で変化を飛ばさないんですね。

デヴィット監督がアクションスタント等を経て監督をしているだけに、ジョン・ウィックでもあるようになまっちょろいアクションはしないんですよね。

それに答えるセロン姉さんのポテンシャルと努力がすごい。

ジョン・ウィック2ではデヴィット監督が抜けてチャド監督の演出ですが、ファンの中にも無印と2だとなんか…?って人がいるのですが、このちょっと…なんか足りない…?って部分がデヴィット監督の生々しさ、暴力性、生命力だと思うんですよ。あと音楽ねカインダ。

でもチャド監督ももちろん私は大大大好きなのでそこは否定じゃないです笑

デヴィット監督の人間は打たれたら血が出るし、痛いし、ダメージ受ける。だからすぐに起き上がって攻撃はできないし、よろけるし。でも戦わないと死ぬから立ち向かうっていう描写がとにかく丁寧なんですよね。そこが生々しさに繋がる。

そこにセロンねえさんの演技が加わるわけだからリアルに違いない。

演技として、唸ったり、攻撃の時に叫んだり、息遣いなど人間が発する音っていうのをすごく大事にしたのが、あの見せ場のロングカットです。

亡命するスパイグラスを救出するためにKGBの男たちと戦うのですが、このシーンかなり長いのですがほぼBGMがない。

なので銃声、攻撃、階段を落ちる音、投げられる音、声、息がダイレクトに伝わってくるんですよね。これがまたすっごい良い。

痛い痛い!ってなるんでけど、ロレーンが死んでたまるか!ってのが伝わってくるんですよね。

あとKGBの男たちの演技もすごい。スタントの方だと思いますが、彼らの死ぬ演技、力つきる演技がとにかくすごい。

アクションの大きなところは倒される側にあるのですが、アトミック・ブロンドの倒される側が本当にリアルなんですよ。

倒れても倒れても立ち上がって生きるか死ぬかの攻防戦。

人間そう簡単には死なないと思わせる生命力を感じます。

私が一番すごいなと思うのは階段のアクションのシーン。ちょっとアフロっぽい人です。

あの人、ロレーンに蹴られ殴られ投げられ、撃たれてるんですけど、そのあと失血してどんどん真っ青になります。そして階段から落ちるのですが、その落ち方が尋常じゃなく痛そう。でも痛そうだけど絶命しているから吹き返すものがない絶望感もくるっていうすごさがありますよね。

その間も音楽は一切なく、ロレーンは敵を撃ちます。

肉弾戦が多いのはベルリンの設定で銃を持ち歩けないからなんですが、流石に後半は持っています。ガンアクションもあるのですが、銃が見せ所というよりも、その恐怖の方が強くでています。あと少しで当たってしまいそうな状態が効果音の重さと突き抜ける木製の扉でわかるわけです。

でもここで銃がすごく印象深くならないのは、リロードをする隙をついてロレーンが攻撃を仕掛けます。そこからロレーンは何が何でも銃に弾を装填させない。これを装填させてしまえば、待つのはスパイグラスと自らの死だから。

その重厚感がとんでもなくすごく、ここからもロレーンとKGBの「何が何でも死んでたまるか」が溢れて来ます。

全員死ぬわけにはいかないのです。

スパイグラスも撃たれてどんどん顔色が悪くなっていくのですが、またそこもすごいリアルです。そうだよね。人間失血すれば顔色悪くなるよねっていう。

アトミック・ブロンドのアクションがリアルな理由は、この人が弱っていく様を丁寧に描いてかつ、死というものから逃れたくてもがいている様だと思います。

攻撃の声や息遣い。これこそ生きている証というわけです。

そして音楽がまったくない状態から、 車のシーンに映る。

 

カーアクション

スパイといえば、アクション、ガンアクション、カーアクションなんては基本です。さすがにアトミック・ブロンドではなさそうだなって思ったらまさかの警察車両を奪ってのアクションです。そこに流れちゃうのがI Ran (So Far Away)。

めっちゃ追われてるのにこの軽快な曲が流れちゃう。そして無機質に車が宙を舞うんですけど、ここのカメラワークすっごいんですよ。今まで見たことない絵でした。

ロレーンの視点もありつつ、フロントから、バックからの画角があるんですけど、それがまたリアルなんですよね。体感型カーアクション。

でもここもまた逃げる何がなんでも逃げる!って気持ちが伝わって来ます。

スパイグラスが本当に死にそうなのがまじ頑張れって思います。

 

 

ドラマ

アクション等をただするだけではスパイドラマとしては成り立ちません。

スパイキャラには人間的な魅力を出さないと無機質になりがちだと思います。

そのドラマを色付けてるのがセロン姉さんの演技力だと思います。

そう、アトミック・ブロンド。ロレーンはトリプルフェイスの女なんです。

だからこそ、そこには演技が必要ですよね。

仕事をこなすクールな女と、人間らしい情がある女。

その二面性があるからこそ、ミスもするわけです。

アトミック・ブロンドのドラマといえば、デルフィーヌとの関係です。

雑誌等で読んだところだと、当時のスパイはマイノリティや、中毒者などを選ぶことが多かったそうなんですけど、ロレーンもそれに当てはまります。

MI6だとね。

あのデルフィーヌの初々しい感じと修羅場くぐり抜けて来たロレーンの組み合わせがまたいいですよね。

ソフィアちゃんがアクションもできてっていうところでアクションの見所があまりないのですが、この役柄とっても難しいと思います。

公私混同の真ん中あたりにいますし。その点、ソフィアちゃんの演技がひかるものがあるのではないでしょうか。

 

ファッション

いやとにかくおしゃれ。全裸でもおしゃれなんですけどどういうことなんですかロレーン。

このファッションなんですけど、私的にはMI6にいるときのロレーンはモノクロを徹底してた気がします。

そしてKGBのときは赤みたいな。ファッションイメージでロレーンの状態がわかるってすごいですよねえ…。いやあ私が感じてるだけでしょうけど笑

ファッションもそうですけど、髪型もすごいと思うんですよ、あの髪型ってどうみてもアクションするような感じじゃないですよね。でもかっこいいんだよなあ…すごいよなあ。かっこいいなあ…。

サングラスもおしゃれだし、コートもおしゃれ。カバンは持っても銃が入ってるし。

グローブもかっこいい。何してもかっこいい。セロンねえさんの美しさもありますけど、あのセンスすっごいかっこいい。そしてそれでアクションしちゃうんだもの〜やだ〜かっこいい〜〜。

そしてキャラクター設定として、酒は水のように飲むし、タバコも吸うし、風呂は氷水だしどういうことですか。かっこいいしちょっとこいつ普通じゃねえな感あるし。

どことなくハニトラも普通につかってるしいやーかっこいい。かっこいい。

ロレーンというキャラクターがとんでもなく好きなんですよ私。

 

 豪華な共演者

いやもうほんと豪華でしょう。

そして観客がそれぞれの俳優に印象付いてるものをうまく活用しているんですよ。

マカヴォイなんてすごいですよね。何考えてるかわからないけど、笑うとまあいいかってなるし。ソフィアちゃんなんてあのうるうるした目がかわいいから抱き寄せるしかないみたいな。

それにセリフと行動と演技が乗っかって来て、謎の中にひきづりこまれて最後の最後までわからなくなるわけです。

 

演出とカラーリング

私がJWとアトミック・ブロンドが好きな理由がネオンカラーに彩られた画面だったり、彩度が低めだったり。画面の色彩が好きなのです。

これはJWの撮影監督をした方がアトミック・ブロンドでデヴィット監督とタッグを組んだことによるものですね。JWの製作でチャド、デヴィット監督両名と仕事をした方は単独での仕事を得たデヴィット監督とタッグを組んだと思います。音楽もそうですしね。

かといってJW2は私がJWにドボンしたのも画面が美しかったからなんです。今後、JW2の撮影監督の作品は楽しみにしています。

 

ストーリー

公開当初言われていたのがかなり難しい、複雑だということです。

私もある程度の人物を抑えていたのでなんとか付いていけましたが、あれ?こういうことでいいのよね?って思いながら劇場を後にしました。

2〜3回見るとアンサーはっきりすんですけどね。うん。

ロレーンは信用できない語り手なんですよ。それにまんまと騙される。

ミッションの本質がだんだんわかってくるものなのでそこをつかみ損ねると???ってなる可能性があります。

 

この先は私の理解度によるので、違うところもあると思います。

はやくDVDくれば…!!!

 

 

 

10日間のロレーンのミッションなのですが、実際はCIAの潜入捜査官である彼女はそれよりもかなり前にMI6に潜入していることになります。

なので描かれている10日間は彼女のミッションの一部でしかないのですが、かなり激動です。

CIAの潜入捜査官のロレーンはMI6に籍を置き、さらにその情報をKGBに流していました。MI6としてはそのダブルスパイをサッチェルと名付けていましたが、実際の漏洩としてはMI6はCIAにもKGBにもされていたことになります。

KGBはロレーンがあたえたMI6の情報に踊らされ、結果的にはCIAにうまく使われて終わります。

ながい潜入でガスコインと一緒に仕事をして恋仲になったようですよね。ガスコインはロレーンをサッチェルだと知っていると私は思っています。

でもそのガスコインが理解しているサッチェルはMI6とCIAのダブルであって、KGBは含まれていないような気がします。もしくはMI6とKGB

ガスコインはロレーンを愛してしまったがためにサッチェルだと当局にいえることなく、ベルリンで殺されるときまでこうなるとは思っていなかったのかもしれません。思うに、ロレーンはスパイリストを利用することを目的としたので、ガスコインが殺されるというところまでは予見していなかったのではないかなと思います。あまっちょろいか。

ロレーンがロシアに精通しているという点であれ?となるわけです。ここから最後の最後まで騙されることになります。ウォッカを嗜んだり、ロシア語が堪能でロシアに精通している。それはロシアで仕事をしていたからか…それとも?みたいな感じで進んでいくわけです。

MI6もぶっちゃげロレーンが怪しいなって思っている部分は大きかったと思います。だからこそ信頼を得るためにロレーンの仕事を見届ける意味はあったわけですよね。

Cとグレイがスパイリストとサッチェルを洗い出して始末しろっていうのはある意味仕掛けている気がします。このあたりも駆け引きがありそうです。

その理由として、パーシヴァルにも同じ任務が与えられている可能性があるからかなと。みんながみんなサッチェルの可能性がある。

 

ロレーンはCIA側からみれば、この事件を使って自分のサッチェルという証拠を抹消したいという狙いと、ベルリンの壁崩壊を早めるというミッションがあったようです。

でもこれをMI6側からみれば、KGBからリスト奪還と、裏切りものを見つけて処罰することです。

KGB側からみれば、KGBのブレモヴィッチといい仲になり、情報をうってKGBに入る感じだったのかもしれません。

一番利用されているのはKGBです。まあ、CIAのエージェントですから、時代背景からみても納得ですよね。

 

このストーリーの何が一番面白いかというと、何層もあることによってどの立場でみれば面白いかっていうのが何種類もあるからなんですよね。

私4回ほどみたのですが、全部違う目線からみておもしろくてしかたありませんでした笑

 

物語後半、スパイリストがKGBを裏切ったユーリからパーシヴァルに渡されるとことが急展開します。

スパイグラスを亡命させるとパーシヴァルが言い出し、その方法もわざわざリスクが高いものを選ぶんですよね。ロレーンはパーシヴァルの作戦に疑問を持っていきます。

もともとパーシヴァルはロレーンを翻弄していたので、そのときに始まったことではないですけども。

パーシヴァルはロレーンがサッチェルだとリストをみてわかり、リストを手に入れたのでスパイグラスは用済み、手柄を手に入れるためにスパイグラスを葬ると同時にサッチェルと判明したロレーンを殺そうと考えます。しかし、KGBにはスパイグラスが亡命するから暗殺よろしくねってお願いするわけです。でも本位としてはロレーンの殺害を目論んでいましたが、直接殺すにはそのバックがあまりにも大きいことを知ってびびったわけですよ。CIA〜〜!!!!

 

といういう風に、ロレーン側から、パーシヴァル側から等視点を変えるとまじでおもしろいです。

しかも行動の一つ一つに裏があり、それぞれが本音を隠してるんですよね〜いやはやすごい。

 

個人的にはロレーンを支える人々がとんでもなくいいです。

時計屋もそうですし、メルケルなんてサイコウですよね。

時計屋はどの諜報機関とパイプをもっているようですが、CIAがバックボーンだと思いますし、メルケルはCIA側でロレーンの専属みたいなところがありますよね。

そのころことがわかるのが、メルケルだとパリのホテルでロレーンがブレモヴィッチと会ってリストを渡すとき。

顔は見えないですけどルームサービスを運んで来たのがメルケルで、仕事が終わったあと後処理をするメルケルが映ります。

時計屋は中立?と思ったけどロレーンを飛行場に送っていくので判明しますね。

 

そこからの飛行機の中にCIAの人が待ち構えていて、手の中にはリストがあり、アナウンスでCIAに向かうっていうのが流れ、「家に帰ろう」ってなるんですよね〜この流れサイコウですよ。ああああああってなってる間にUnder Pressure (feat. David Bowie)が流れ始めちゃうんだもん…。

しかも、このときのロレーンは今までにないほっとした表情で微笑むし、髪型もアメリカの女性っぽい感じになっていますよね。すごいなーって思います。

パリでKGBと会っていたときのロレーンはウィッグを赤毛にして妖艶なメイクだったですし。ファッションで国に染まるというスパイ技も見せてくれてるわけですね〜。

 

また加筆修正することもありますし、語り忘れていることもあると思いますが、劇場で一度ご覧になった方もDVDやリバイバル上映がありましたら、ぜひ違う視線からご覧になっていただければな、と思います。